【小噺】オルノス誕。
超絶に過ぎてますけどやっぱり書きたくなったので投下。5月18日誕生日でした。
生誕小噺って、一部分でしかないけどそれだけでも割とキャラの個性とか性格とか把握も理解もできるので、僕としては一番確実な方法のひとつなんですよね。
話の本筋としては全く伝わらないものかもしれないですけれど、一種のメモリアルとでも思っておいてください。
―――――――――――――――――
騎士になる前、それは唯一の家族らしい光景だった。
両親がいて、兄がいて、そして僕を囲うように祝福の言葉を紡ぐ。
その瞬間だけは、騎士だとか貴族だとか、そうした肩書きを忘れさせてくれる日でもあった。
けれどそれも、騎士になる前までだ。
「―――あら、でもそれは素敵なことじゃない?」
変わらない、凛とした声でそう告げる彼女に、僕は首を傾げた。
「たとえそれがその日までだとしても、家族に祝ってもらえるのはとても素敵なことだと思うわ。自分が生まれたことを家族が祝福してくれるというのは、普段がどうであれちゃんと愛されてるって証拠でもあるもの」
「証拠?」
「ええ。家系や肩書きを気にして、自身の子供に愛情を注がない貴族も中にはいるもの。その人たちは大方良しとは言えない道を歩んでると聞いてるわ」
もちろん、それが事実なのかはわからないけれど、と加えながら、彼女は淡々と語る。
「…わたしも、誕生日はお兄様が毎年祝ってくれるけれど、それ以外はいつもと変わらないのよ。両親も忙しい身だから、時間を割いている場合でもないから」
「……それで、祝い事に敏感なんだね」
「そうね。どんな肩書きであれ、生まれてきたことに罪はないもの。わたしの些細な愛情だけれど、ありがとうくらいは伝えたいと思うの」
凛として、迷いなく紡ぐ彼女の表情は、確かに王女らしいもので。
それでいて、妥協を許さない頑なな意志も持っていて。
王族らしかぬ考え方と、その行動力にはいつも手を焼いてはいるけれど、だからこそ、国民は彼女を支持しているのかもしれないと思えるほどに、頼もしい姿で。
それが、いち国民として誇らしくも思う。
「だからね、オルノス。こうして貴方が生まれて、わたしと出会ったこともきっと何か意味はあると思うの。少なくともわたしは、貴方に出会えてとても嬉しいわ」
近衛兵として配属されて、未熟ながらも毎日任務に奔走して。
その半分は、彼女の話し相手として奔走して。
こうして彼女と話すことで、僕自身も構えていた気持ちが和らいだこともあった。
それ以来、張り詰めていた気持ちにも余裕ができたことは確かだ。
「……君は変わらないね」
「…そうかしら?」
「変わらないよ、出会った頃からずっと」
自分よりも、自分に関わるすべての人を愛する。
そしてそれを糧に、立ち向かっていく。
「はー…僕にもできるかなあ…自信ないなあ…」
「いつになく弱気ね」
「弱気にもなるよ…こうして誕生日を迎えるたびに、のしかかってくる重みが違うからね…」
騎士として、人として。
まだできる限りではあるけれど、それを全うしていきたいと願う。
ただそのための重みは、日に日に増していくのだ。
だからこそ、彼女がとても羨ましく、且つ誇らしく思う。
「大丈夫よ、オルノス」
俯いて、項垂れている僕に、彼女ははっきりと告げる。
「貴方は何が大切で、何が大事なのかを知っている。それを忘れなければ、自然と導きだされるのよ」
「…そうだといいけど」
「そうなの。少なくともわたしには、貴方が誇らしく思うのだから」
迷いなく、自信たっぷりに言われてしまえば、何も言えなくなる。
それがただのお世辞だと思っても、彼女の言葉に嘘は感じない。
(…それも、ひとつの魅力だよね…)
それは、出会った頃から感じていたことだ。
幼い頃から接していた貴族たちは皆、己を着飾ることばかりに執着していた。
だから、王族もそうなのだと決め付けていたのだが、彼女だけは違う空気をまとっていた。
ゆえに、一瞬にして惹かれていた。
「…あ、肝心なことを言い忘れてたわ」
ふいに、彼女はそう言って僕の手にそれを重ねて、きゅっと握る。
そして、
「誕生日おめでとう、オルノス。生まれてきてくれて、わたしと出会ってくれてありがとう」
そう、笑顔で告げる彼女に、また瞬間的に心奪われてしまう。
これが素なのだから、溢れる気持ちのやり場に困る。
「……ありがとう。僕のほうこそ、君に出会えてよかった」
絶対に、伝えられない想いを無理矢理押し込めて、同じように握る手に力を込めた。
どんなに肩書きに振り回されようとも、決して曲げないその強さに、けれどそれでいて優しさを忘れない心に。
そしてそんな誇らしい彼女への想いを悟られないように。
けれど少しばかり照れながら、そう言って同じように微笑んだ。
生誕小噺って、一部分でしかないけどそれだけでも割とキャラの個性とか性格とか把握も理解もできるので、僕としては一番確実な方法のひとつなんですよね。
話の本筋としては全く伝わらないものかもしれないですけれど、一種のメモリアルとでも思っておいてください。
―――――――――――――――――
騎士になる前、それは唯一の家族らしい光景だった。
両親がいて、兄がいて、そして僕を囲うように祝福の言葉を紡ぐ。
その瞬間だけは、騎士だとか貴族だとか、そうした肩書きを忘れさせてくれる日でもあった。
けれどそれも、騎士になる前までだ。
「―――あら、でもそれは素敵なことじゃない?」
変わらない、凛とした声でそう告げる彼女に、僕は首を傾げた。
「たとえそれがその日までだとしても、家族に祝ってもらえるのはとても素敵なことだと思うわ。自分が生まれたことを家族が祝福してくれるというのは、普段がどうであれちゃんと愛されてるって証拠でもあるもの」
「証拠?」
「ええ。家系や肩書きを気にして、自身の子供に愛情を注がない貴族も中にはいるもの。その人たちは大方良しとは言えない道を歩んでると聞いてるわ」
もちろん、それが事実なのかはわからないけれど、と加えながら、彼女は淡々と語る。
「…わたしも、誕生日はお兄様が毎年祝ってくれるけれど、それ以外はいつもと変わらないのよ。両親も忙しい身だから、時間を割いている場合でもないから」
「……それで、祝い事に敏感なんだね」
「そうね。どんな肩書きであれ、生まれてきたことに罪はないもの。わたしの些細な愛情だけれど、ありがとうくらいは伝えたいと思うの」
凛として、迷いなく紡ぐ彼女の表情は、確かに王女らしいもので。
それでいて、妥協を許さない頑なな意志も持っていて。
王族らしかぬ考え方と、その行動力にはいつも手を焼いてはいるけれど、だからこそ、国民は彼女を支持しているのかもしれないと思えるほどに、頼もしい姿で。
それが、いち国民として誇らしくも思う。
「だからね、オルノス。こうして貴方が生まれて、わたしと出会ったこともきっと何か意味はあると思うの。少なくともわたしは、貴方に出会えてとても嬉しいわ」
近衛兵として配属されて、未熟ながらも毎日任務に奔走して。
その半分は、彼女の話し相手として奔走して。
こうして彼女と話すことで、僕自身も構えていた気持ちが和らいだこともあった。
それ以来、張り詰めていた気持ちにも余裕ができたことは確かだ。
「……君は変わらないね」
「…そうかしら?」
「変わらないよ、出会った頃からずっと」
自分よりも、自分に関わるすべての人を愛する。
そしてそれを糧に、立ち向かっていく。
「はー…僕にもできるかなあ…自信ないなあ…」
「いつになく弱気ね」
「弱気にもなるよ…こうして誕生日を迎えるたびに、のしかかってくる重みが違うからね…」
騎士として、人として。
まだできる限りではあるけれど、それを全うしていきたいと願う。
ただそのための重みは、日に日に増していくのだ。
だからこそ、彼女がとても羨ましく、且つ誇らしく思う。
「大丈夫よ、オルノス」
俯いて、項垂れている僕に、彼女ははっきりと告げる。
「貴方は何が大切で、何が大事なのかを知っている。それを忘れなければ、自然と導きだされるのよ」
「…そうだといいけど」
「そうなの。少なくともわたしには、貴方が誇らしく思うのだから」
迷いなく、自信たっぷりに言われてしまえば、何も言えなくなる。
それがただのお世辞だと思っても、彼女の言葉に嘘は感じない。
(…それも、ひとつの魅力だよね…)
それは、出会った頃から感じていたことだ。
幼い頃から接していた貴族たちは皆、己を着飾ることばかりに執着していた。
だから、王族もそうなのだと決め付けていたのだが、彼女だけは違う空気をまとっていた。
ゆえに、一瞬にして惹かれていた。
「…あ、肝心なことを言い忘れてたわ」
ふいに、彼女はそう言って僕の手にそれを重ねて、きゅっと握る。
そして、
「誕生日おめでとう、オルノス。生まれてきてくれて、わたしと出会ってくれてありがとう」
そう、笑顔で告げる彼女に、また瞬間的に心奪われてしまう。
これが素なのだから、溢れる気持ちのやり場に困る。
「……ありがとう。僕のほうこそ、君に出会えてよかった」
絶対に、伝えられない想いを無理矢理押し込めて、同じように握る手に力を込めた。
どんなに肩書きに振り回されようとも、決して曲げないその強さに、けれどそれでいて優しさを忘れない心に。
そしてそんな誇らしい彼女への想いを悟られないように。
けれど少しばかり照れながら、そう言って同じように微笑んだ。