【小噺1】
世界は、ただ無情にも廻り続けている。
どんなに彷徨い、途方に暮れていても、それを嘲笑うかのように廻り続けている。
時を刻み、流転し、朝、昼、夜、と規則的なサイクルのもと廻り続けている。
またそれに合わせるかのように、人も廻る。
義務付けられているかのように、時と共に流転していく毎日。
ただひとり、僕が立ち止まっていても、世界はお構いなしに動いていく。
僕が事故に遭い、動けなくなっていても、世界は進む。
そんな代わり映えのしない世界が、僕は大嫌いだ。
政治家たちは頭の固い言葉を並べ立て、やれ常識だ、やれそうあるべきだと正論付ける。
報道陣は、面白おかしく造り上げ、それが真実だと言わんばかりに主張する。
どれだけ正論を並べようが、どれだけ主張を放とうが、結局何が正しいのかそうでないかは自分次第。
そんな無責任な世界を、僕はいつしか拒絶するようになった。
午前七時二十五分。
なんの変哲もない、朝が来る。
人というサイクルの、「目覚める」という行為。
カーテンの隙間から覗く、陽の光が「起きろ」と攻め立てる。
けれどそれに抗うように、僕はがばりと布団をかぶり闇の世界へと舞い戻る。
睡魔なんて、ない。
眠くもない。
ただその目の前に広がる現実から、義務付けられた世界から消えたかっただけ。
「社会」というこの世の全てから、消えてなくなりたいだけ。
カチ、カチ、と時が刻む。
しばらくそこに埋もれ続けて、もぞ、と手を伸ばし携帯を取る。
時刻は午前七時半。
埋もれてから、ほんの五分しか経っていない。
それでも、埋もれた布団の中から出ようとは思わない。
時間なんて、僕には無意味なものだからだ。
無論、そうして眠れるわけでもないけれど。
世界を断ち切り、自分だけの空間に居座るようになってから、半年。
まともに眠れた日は、そのさらに半分くらい。
どれだけ睡眠を欲していようと、またどれだけ疲れていようと、「寝る」という行為はただ体を横にして目を瞑る程度。それで眠りに落ちるのならそれでいい。
けれど実際は、眠ってもほんの一時間でまた目を覚まし、また眠ってもほんの一時間でまた目を覚ますという無駄なサイクルを繰り返すだけ。
俗に言う、睡眠障害だった。
それでも、身体を休ませるだけでそれなりの疲労は回復できる。
ずっと身体を起こしているよりも、気分としては良くはなる。
ただの、気休めでしかないのだろうが。
そんな生活を続けていたある日、変化があらわれた。
ふいに、記憶が飛んだのだ。
ほんの数日の記憶が、すっぽりと抜け落ちているかのように、何も思い出せない。
眠っていたわけではない、布団に埋もれていたわけでもない。
そう断言できる根拠は、僕がいつものように生活をしていた痕跡があったから。
しかしいつもと違ったのは、その自分だけの空間から飛び出していたこと。
遮断したはずの世界に、踏み出していたことだった。
それが、僕の中にある光と影の存在だと知ったのは、それからさらに半年が過ぎた頃だった。
どんなに彷徨い、途方に暮れていても、それを嘲笑うかのように廻り続けている。
時を刻み、流転し、朝、昼、夜、と規則的なサイクルのもと廻り続けている。
またそれに合わせるかのように、人も廻る。
義務付けられているかのように、時と共に流転していく毎日。
ただひとり、僕が立ち止まっていても、世界はお構いなしに動いていく。
僕が事故に遭い、動けなくなっていても、世界は進む。
そんな代わり映えのしない世界が、僕は大嫌いだ。
政治家たちは頭の固い言葉を並べ立て、やれ常識だ、やれそうあるべきだと正論付ける。
報道陣は、面白おかしく造り上げ、それが真実だと言わんばかりに主張する。
どれだけ正論を並べようが、どれだけ主張を放とうが、結局何が正しいのかそうでないかは自分次第。
そんな無責任な世界を、僕はいつしか拒絶するようになった。
午前七時二十五分。
なんの変哲もない、朝が来る。
人というサイクルの、「目覚める」という行為。
カーテンの隙間から覗く、陽の光が「起きろ」と攻め立てる。
けれどそれに抗うように、僕はがばりと布団をかぶり闇の世界へと舞い戻る。
睡魔なんて、ない。
眠くもない。
ただその目の前に広がる現実から、義務付けられた世界から消えたかっただけ。
「社会」というこの世の全てから、消えてなくなりたいだけ。
カチ、カチ、と時が刻む。
しばらくそこに埋もれ続けて、もぞ、と手を伸ばし携帯を取る。
時刻は午前七時半。
埋もれてから、ほんの五分しか経っていない。
それでも、埋もれた布団の中から出ようとは思わない。
時間なんて、僕には無意味なものだからだ。
無論、そうして眠れるわけでもないけれど。
世界を断ち切り、自分だけの空間に居座るようになってから、半年。
まともに眠れた日は、そのさらに半分くらい。
どれだけ睡眠を欲していようと、またどれだけ疲れていようと、「寝る」という行為はただ体を横にして目を瞑る程度。それで眠りに落ちるのならそれでいい。
けれど実際は、眠ってもほんの一時間でまた目を覚まし、また眠ってもほんの一時間でまた目を覚ますという無駄なサイクルを繰り返すだけ。
俗に言う、睡眠障害だった。
それでも、身体を休ませるだけでそれなりの疲労は回復できる。
ずっと身体を起こしているよりも、気分としては良くはなる。
ただの、気休めでしかないのだろうが。
そんな生活を続けていたある日、変化があらわれた。
ふいに、記憶が飛んだのだ。
ほんの数日の記憶が、すっぽりと抜け落ちているかのように、何も思い出せない。
眠っていたわけではない、布団に埋もれていたわけでもない。
そう断言できる根拠は、僕がいつものように生活をしていた痕跡があったから。
しかしいつもと違ったのは、その自分だけの空間から飛び出していたこと。
遮断したはずの世界に、踏み出していたことだった。
それが、僕の中にある光と影の存在だと知ったのは、それからさらに半年が過ぎた頃だった。